よいコピーとは「一行でパッとイメージが拡がる」コピーである。

スピード感と柔軟性が求められる現代、企業活動は事業部単位となり、SNSや企業ブログなど発信のチャネルも多様化してきています。広告宣伝担当者に限らず、広報や人事などあらゆる職務領域において言語化力の重要性が増しています。

前回は「よいアイデアとは、思わずやってみたくなるアイデアである」というテーマでしたが、そのアイデアの魅力を端的に受け手に伝達する技術が「コピーライティング」です。今回は言語化術の究極ともいえるコピーライティングについて深堀りします。まずは「良いコピーとは?」から考えてみましょう。

よいコピーとは「一行でパッとイメージが拡がるコピー」である。

よいコピーの定義のひとつが「一行でパッとイメージが拡がるもの」です。コトバの圧縮技術を用いて「文字量」と「情報量」の非対称性を極大化させるワザがコピーライティング。コピーライターとは、原稿用紙ではなく、受け手の想像力をキャンバスにする書き手といえます。

一行でパッとイメージが拡がるコピーの代表例が、新潮文庫のタグライン「想像力と数百円」(CW.糸井重里)でしょう。若者に向けた知性への誘いであるこのコピー、実はコントラスト構造にもなっていて「数百円」という極小の値段との対比によって「想像力」に無限大の拡がりや期待感が生まれる仕掛け

また伊勢丹のアン・クラインという腕時計ブランドの「目を閉じても見える人。」(CW.眞木準)というコピーも、その時計をはめる人の「たたずまい」を鮮烈に描写しています。たった一行の言葉が、どんな映像よりも映像的であり、これを身に着けた人物像がパッと立ち上がってくるようです。

一行で「受け手のアタマの中にパッとイメージを拡げる」のがコピーの役割だとすれば、その相方であるビジュアルの役割は「イメージの拡張を助ける」こと。よくコピーの「説明」になってしまっているビジュアルを見かけますが、それは受け手の想像力を阻害してしまうので逆効果ということですね。

一行のコトバを介して、送り手と受け手は「コミュニケーション」する。

人は自ら「関与」したものを体験として記憶します。体験には「認識的体験」もあり、一行の短いコトバをきっかけに脳内でさまざまなイメージが拡がっている時、主体的に想像を膨らませているのは他ならぬ自分自身なのです。送り手と受け手のコトバを介した相互作用。だから広告活動のことを「コミュニケーション」と言うのです。

最新情報をチェックしよう!