先週の記事で「ブランドの言語化」を職業とするコピーライターの必読書をご紹介しました。今週からは、これからの時代の働き方上手さんの必須スキルであるこの言語化能力について、さらに掘り下げていきます。
言語化とは「要するに」を枕詞とした概念的な超整理術。たとえば何度聞いてもどっちがどっちか迷う「円安・円高」。円高の時に1ドル=〇円の数値が逆に下がるのでややこしいのですが、これも本質を押さえていれば迷いません。為替というのは要するに通貨同士の「購買力の変動」と捉えるとわかりやすいのです。円高の時は円の購買力が上がるのでドルを安く買え、資源や原料を輸入する企業が有利になり、逆に円安だと相手国通貨の購買力が上がるので自動車などが海外で割安になるため輸出企業が伸びます。
言語化による整理によって、それ以降その事柄に対して「迷い」がなくなり即断できるようになります。チームや組織における言語化になると、そこに関わる何十人や時によると数千人単位の人が「即断」できるようになります。それが言語化のチカラです。
働き方上手さんの「情報収集術」
ジェームズ・W・ヤングの「アイデアの作り方」によれば、コピーライターの高度な言語化における最初の作業は「情報収集」です。情報には二種類あるといいます。
特殊情報
まずひとつめは「特殊情報」。これは「オリエン資料」や「マーケティング調査資料」など、企業の内部にある専門知を指します。一般的にクライアントが必要な情報を整理してまとめてインプットしてくれますが、競合に勝つためには「その上」の情報を積極的に獲りにいく必要があります。
適切な質問がなければ、適切な回答は得られません。働き方上手さんは取引先とのヒアリングにおいてはHPをみればわかることはアタマに入れた上で、その先の一歩踏み込んだインナー情報を掴みにいくようにします。例えば人口全体におけるカテゴリの利用者割合や競合とのシェア割合、過去のブランドメッセージの変遷などです。
一般情報
ふたつめは「一般情報」です。新聞・雑誌などで一般に公開されている情報ですが、誰でも手に入るからといってバカにしてはいけません。米国のCIAや各国の諜報機関も、スパイ活動等からの特殊情報は一部で、9割以上は一般に手に入る膨大なメディア情報などをひたすら分析しているのだそうです。働き方上手さんになるのに近道はありません。まずは自身の職業領域での良質な情報源を見定め、一般情報をコツコツ収集・分析していきましょう。
普通の人は案件がきてから資料集めを始めますが、働き方上手さんは何年も前から材料を集め続けています。ほんとうの準備とは、いついかなる案件がきても即応できる情報スクラップを1年365回積み重ねること。雑誌の目次から旬なワードを拾ったり、付録だけを集めたり。整理しながら手続き記憶で頭に入れる、という作業をイチローのルーティンのように黙々と続けていきます。
毎日の情報スクラップをする際、自分なりの解釈もセットにすると記憶に残りやすく、また自分独自の視点も養われていくのでオススメです。これからの「個」の時代、個性を磨かなきゃ!と思っても具体的に何をすべきかわからないもの。これは最も確実で効果のある「働き方上手さんの新ルーティン」です。
勝負の前に、リサーチワーケーション
気になる資料を取り揃えてても、雑務が邪魔して読み込めない。そんな時は、資料を持って篭りましょう。心地よい場所に行けば気分も整います。「陽気の発するところ金石また透る」の通り、散逸した意識では見落としてしまう原石にも気づくことができるはず。